英国出張

 英国のリバプールに出張しました。Infection Prevention Society(IPS2012)に参加するためです。IPSはかつてのICNA(Infection Control Nurse's Association)であり、学会ではありませんが、日本ではICNの団体であるICNJ(一般社団法人日本感染管理ネットワーク)、米国ではAPICが近いかもしれません。

 IPSでは欧州の感染予防学会らしく、WHOやECDC(European CDC)からの報告からスタートし、グローバルアラートとして結核や多剤耐性菌の問題、そしてクロストリジウム・ディフィシル関連の報告等が目立ちました。
 印象的だったのは日本でもおなじみのAPIC元会長、Russell Olmstead先生のお話。
ちなみに最初の写真のこのスライド、米国の医療関連感染による直接医療費は年間2兆8560億円〜3兆6000億円($=¥80換算)、感染制御は投資収益率(ROI)で考える必要があり、効果的な予防策の介入による収益は、低い場合(20%を予防)で4560億円〜5440億円、高い場合(70%を予防)で2兆円〜2兆5200億円とのこと。英国なのにいきなり米国ネタになってしまいましたが、感染予防はコストではなく、投資だという考え方はあらためて重要だと感じました。
 経営者の端くれとして思うのですが、事業を経営する上で、リスクを単にコストと見るのか、それともそのリスクをチャンスと見て投資するのかという判断はいつも紙一重。今後、感染予防が医療施設の経営判断の中でより重要な役割を果たすと信じています。

 その他の報告でインパクトが大きかったのが、ピア・エデュケーターのDavid Olapoju氏のセッション。ピア・エデュケーターとは、受け取り側と同じ価値観や境遇、経験を持つ教育者のこと。Olapoju氏は自身もかつてホームレスの時代に多剤耐性結核に罹患し、生死をさまよった後、生還したという経歴の持ち主で、その経験を活かしてホームレスや低所得者の結核治療をサポートしているとのことでした。トレッドヘアで黒人の彼は一見するとレゲエミュージシャンのようですが、パワポも一切使わず、語りかけるような彼の講演に聴衆は魅了されていました。医療従事者でない彼の話はとても新鮮だったようで、終了後のディスカッションでも彼のセッションがダントツで盛り上がったと思います。
 日本でもこの企画、ぜひやってみたいなと....。


APIC元会長 Russell Olmstead先生、登壇。

IPS2012スタート!

会場に隣接するALBERT DOCK (世界遺産)。この一角が宿泊先のホテルでした。

ポスターセッションでは日本のCICNの橋本史代さん(福岡大学病院、国際医療福祉大学大学院)がThe Best Poster Awardにノミネートされました!

Liverpoolの由緒あるSt. George's HallでのGala Dinner. 英国の仲間たちと。ドレスコードはブラックタイ。

Liverpoolといえば....。

Beatles Story.....John Lennon








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