医療機関向けマスクが足りない!「緊急提言」

緊急提言!

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医療現場にお届けするマスクが足りない。他の感染予防物資も滞り始めている。災害対策には力を入れ、備蓄でかなりの在庫は持っていたつもりだが、次の入庫スケジュールがパンデミックによって大きくズレはじめている。このままだとマスクも他のPPEもいずれ底を突く。製品を作っている感染制御屋としてこれほど憤懣やる方ない事はない。役割が果たせない。

 日本のマスクの約8割は海外からの輸入で、国産は2割に過ぎない。特に医療用はコストの問題からほとんどが輸入品だ。輸入はほぼ中国と台湾からであり、我々もこの2国に製造を分散させていたが、中国は元より、台湾も早々に全てのマスク工場を国が接収し、輸出を一切禁じてしまった。台湾は軍まで出動させ、我々の工場を監視させている(今のところ輸出禁止措置は4月末まで)。

 経産省も色々個別に動いてくれ、我々の工場からマスクを日本向けにも出すように中国当局にクレームを入れてくれているが、それが功を奏するかは現時点ではわからない。現地工場とは当然、頻繁にやりとりしているが、動き始めるのは恐らくGW連休明け頃になると思う。この状況で国産メーカーさんも2倍以上の増産をしているが、需要の急増と共にその多くは、薬局に毎朝並ぶ一般の人々の戦利品となっている気がする。シャープさんはマスクの製造を3月からと表明しているが、親会社の鴻海精密工業がマスクを中国で製造しているので、設備やノウハウも継承できているんだろうと期待してる。

 一方、中国のアウトブレイクがおさまってきたので日本にもマスクがもっと回ってくると思いたいが、現実は世界がパンデミックに突入したので、欧米を中心に世界中で中国製マスクの争奪戦が起き始めている(中国が世界のマスク工場なので)。結果、原料も含め異常な価格高騰が始まっているので、この戦いを勝ち抜くには、かなりの値上げは覚悟しなければならない。落ち着くには世界の状況もあるが、少なくとも半年以上はかかると思う。

医療従事者が倒れたら、医療が崩壊する
 このままだと、日本の医療現場のマスク(他のPPEも中国製が多いのでかなりヤバい)が枯渇する。個人防護具無しで、新型コロナウイルス感染症に立ち向かうことはできない。医療従事者が院内感染で倒れたら、救える命が救えなくなる。医療が崩壊する。迅速診断キットやワクチン、治療薬の開発も重要だが、その前に医療従事者の安全が守れない。それでなくとも患者の急増で疲弊し、殺伐としつつある医療現場でさらに個人防護具PPEが無くなったらどうやって医療を継続させると言うのか。

今、すべきこと、できること
 誤解を恐れずに言えば、今すべきことは、国内のマスク工場を中国や台湾のように国が管理下に置き、出荷の全てを一般消費者ではなく、まずは医療現場にまわすことだ。今は行政が国産メーカーさんと契約で購入するという形を取っているようだが、間に合わない。国内メーカーさんもこの非常事態はご理解すると思う。我々も国産したいが、しようにも製造設備も争奪戦になっており、納期の見通しすらたたない。マスク屋なのに他力本願で何もできず発狂しそうだ。

 厚労省、経産省、消費者庁が「毎週1億枚以上のマスクを消費者のみなさまにお届けします」(添付写真)と言ってくれている。それが本当ならば、それら全てを医療機関(病院、介護施設)に最優先でまわすべきだ。
一般の方々は自身に症状がある人にマスクは必要だが、それ以外の人は感染クラスターに近づかない限り、マスクは必要ない。手洗いだ。国民に丁寧に説明すれば理解は得られると思う。一般の方々もマスクのない不安は十分すぎるほど理解できるが、実際に感染患者さんを救うために濃厚接触せざるを得ない医療従事者を優先することを理解して欲しい。
 もしくは、今、中国の医療用マスク(ASTM規格品)は通常の約20倍(!)の金額を出せば入手できるルートもある(涙)。もちろん合法だが、原料の高騰と世界の需要の急増によって即納マスクはこんな状況なっている。一企業や一病院で対応できる範囲を超えているので、本意ではないが、国や都道府県でサポートいただければ、今、困窮されている医療機関を救うことはできる。

今後の体制
 今後は、国内備蓄の見直しや国産キャパシティ増加は必須だが、それぞれの国が自分の国のことしか考えないような鎖国世界には反対だ。グローバルにサプライチェーンが繋がり、世界経済は成り立っている。ボーダーレスに拡散する感染症に対抗するにはグローバルな協力、支援体制が不可欠だ。武漢の医療資材が枯渇し大変だった時、我々は外務省の依頼により、チャーター機用にPPEを支援物資として中国に提供した。批判もあるが、今もその判断は間違ったとは思っていない。困ったときはお互い様だ。

 今、中国でも日本を支援したい、恩返しをしたいと言ってくれる人たち、企業も多くある。今が踏ん張り時だ。使えるコネは総動員して物資確保に国内外で全力を尽くす。もちろん、あきらめない。これを機にPPEのグローバルな災害支援体制(パンデミック・サプライチェーン)が国家レベルで進化することを期待したい。


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