新型コロナウイルス感染症、介護施設、在宅、家庭では何をすべきか?(更新3/13/2020)

更新しました。2020年3月13日 

 新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行が始まり、WHOは「パンデミック」を表明しました。世界と共に日本も感染蔓延期に入ったと考える必要があります。国内の感染者は恐らく今後増加すると思われますが、これまでわかってきた情報から、新型コロナウイルスの病原性は、高齢者や糖尿病、心臓病、喘息等の持病を持っている方には、インフルエンザより高く、80歳以上だと発症した方の15%が亡くなるという報告です。若くて健康な方は重症化するリスクは低いようですが、高齢者や基礎疾患のある方には、インフルエンザよりも危険な感染症です。よって、今後、さらに感染拡大が予想される新型コロナウイルス感染症に対する感染対策は非常に重要です。ここでは在宅や介護施設における感染対策に関して、ご家族、介護従事者の方々向けの情報を共有します。

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新型コロナウイルス感染症、
私たちは何をすべきか?

 例えば、自宅療養中の高齢者の方が新型コロナウイルスに感染したら、命に関わる可能性があります。糖尿病等の基礎疾患のある方も重症化する可能性があります。高齢者施設や在宅こそ、医療介護従事者だけでなく、ご家族も一緒に高い意識で感染対策に取り組むことが大切です。
 今回の新型コロナウイルスは、手指などに付着したウィルスを体内に取り込む「接触感染」や、咳やくしゃみ、唾などの飛沫の曝露による「飛沫感染」であることが明らかになってきています。感染経路の予測ができることから、在宅ケア、ご家庭における新型コロナウイルスの感染予防対策は実はシンプル。下記の5点となります。;

1. 手指衛生(流水による手洗い or アルコール消毒剤)
2. 咳エチケット(手ではなく、袖で押さえる)
3. 環境衛生(ドアノブや手摺り等のみんなが触る場所の清掃、消毒)
4. 個人防護具(マスク、手袋、エプロン、状況に応じてゴーグル)
5. 室内換気(換気の悪い密閉空間にしない)


■家族から感染するのはしょうがない(家庭内感染)?
 高齢者の感染ももちろんですが、家族が学校や保育所、職場等で感染し、自宅で家族から感染するといったケース(家庭内感染)も今後、増えると思います。家族ですので当然、献身的に介護をするため、結果的に濃厚に接触し、高い確率で感染する可能性があります。もちろん、重症化するケースもあるため、感染した親は子どもの面倒を見れなくななったり、長期間仕事を休む必要があったり、職場で感染を広げるリスクがあったりと、健康面だけでなく、社会的にも経済的にも大きな問題となります。本来防ぐことができる感染が家庭内には多く存在すると思われるので、家庭内感染対策に対する知識をもっと深めることは非常に重要です。

■じゃあ、どうしたらいいの?
 感染した子どもや家族に密接に接触する場合や、吐物・排泄物に接触する場合は、マスクをし、接触後は必ず手指衛生(流水による手洗い、消毒用エタノール等のアルコール製剤「以下、アルコール」による消毒)をするようにして下さい。食器類やタオルの共用は避け、ドアノブや手すり、使用済みのティッシュに触れた場合も同様に手指衛生が必須です。
 自分の家族を汚いもののように扱うことには強い抵抗があると思いますが、子供や家族を守るためにも大切なことなので、少なくとも、手指衛生と咳エチケットは家族にも伝え、徹底するようにして下さい。特に感染した(疑い含む)家族がマスクをし、手指衛生と咳エチケットを徹底することは家庭内にウイルスを撒き散らさないために重要です。マスクをしていてもくしゃみや咳でエアロゾルは舞う可能性があるので、必ず袖で押さえてくしゃみをするようにして下さい。自分のためでなく、愛する家族のため。親がダウンしては子供を守ることができませんし、同居の他のご家族もリスクにさらされます。

 また、これまでの研究で、換気の悪い密閉空間での集団感染(クラスター)が多く発生しています。家庭内でも定期的に窓を開けて換気をしましょう。

 咳エチケットに関してはコチラ(東京都感染症情報センター)

 厚生労働省チャンネル(くしゃみ・エアロゾル )(厚生労働省)

 手指衛生に関しては、その場で即座に消毒できるアルコールが便利なだけでなく、目に見える汚れがない限り、さらに効果は確実です。ただし、残念ながらアルコールは現在、薬局やネットでも品切れで入手が困難になっています。その場合はこまめに、流水とソープによる手洗いをしましょう。訪問看護・介護を受けているご家庭では必須です。訪問従事者が残念ながら手指衛生しないこともありますので、ご家族からも使用を促してください。

■感染リスクのある場所とは?
 現在、感染経路が特定できない感染者が多く報告されており、一部の地域で小規模な患者集団(クラスター)が発生していると考えられています。
このクラスターへの感染対策が遅れると感染の連鎖が始まり、大規模な感染拡大につながる可能性があります。
 そのため、自分や家族が感染しないことはもちろん、感染を拡大させないためにも、集団(クラスター)が形成される場所に行くのは控える必要があります。
 これまで感染が確認された場所に共通するのは、①換気の悪い密閉空間、②人が密集していた、③近距離で会話や発声行われていたという3つの条件が同時に重なった場所です。これらの3つの条件が全て重ならないまでも1つまたは2つの条件があれば、何かのきっかけで3つの条件が揃うことがあるので注意が必要です。

クラスターの発生リスクを下げるための3つの条件

1)換気を励行する:可能であれば2方向の窓を同時に開け、換気する。
2)人の密度を下げる:人が多く集まる場合には、会場の広さを確保し、お互いの距離
  を1〜2m程度空けるようにする。
3)近距離での会話や発声、交唱を避ける:やむを得ず近距離での会話が必要な場合、
  咳エチケットを徹底し、マスクを着用する。

これらに加え、不特定多数がモノを共用する(接触)場所でも感染が確認されているので、こまめな手指衛生と咳エチケットは必須です。
また、共用するモノや環境表面もこまめに消毒することは重要です。

環境衛生も重要。
 今回の新型コロナウイルス肺炎は、接触・飛沫感染と考えられていますが、結局は手指についたウイルスを眼、鼻、口に取り込むことにより感染することが最大の感染経路です。たとえ、手指衛生をキチンとしても汚染された環境表面(ドアノブや手すり等)に触れれば再汚染しますので、環境表面の消毒もとても重要です。また、便や尿の排泄物や嘔吐物も感染源になり得るので、清掃・処理した後は手指衛生はもちろんのこと、汚染した環境表面(家具や床等)は清掃だけでなく、消毒する必要があります。市販の家庭用塩素系漂白剤(ハイター等)であれば、約50倍希釈すれば、ノロ等にも有効な1,000ppmとなるので(ペットボトルのキャップ2杯分の原液を500mlペットボトルの水で満たせば出来上がり)、この溶液を使用して、汚物を十分に取り除いた後、その表面を一方向に(ゴシゴシしない)拭きあげてください。ゴシゴシすると汚染を広げることになります。その際は、換気と手袋を忘れずに。また、塩素系消毒剤は対象物にダメージを与えることが多いため、初めから除菌成分を含浸させたワイプも市販されているので、こちらもご家庭に常備しておくことをオススメします。ただし、その除菌ワイプがコロナウイルスやノロウイルスにも対応したものか確認することも重要です。


汚染された環境は清掃だけでなく、消毒が必要

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介護従事者は、自分自身を感染から守れなければ、利用者を守ることはできない。

 感染対策には、手指と環境の衛生が重要とのお話をしましたが、介護従事者にとって同様に大切なことは、自身を守るための個人防護具(マスク、手袋、エプロンorガウン、アイウェア)を適切に使用することです。


 在宅介護は、利用者さんのご家庭内でのケアであり、相手が患者さんではなく、利用者さんであることからも「マスクや手袋で自分たちを防御するのは失礼だ」と献身的に考えている方も多いようですが、実際は全く逆です。自分を守らないと患者さん、利用者さんを守ることはできません。万が一自分が感染した場合、知らないうちに他の患者さん、利用者さんへ感染させてしまうリスクがあるということを忘れないでください。

■マスク
 今、入手が非常に困難になっていますが、一般的に販売されているマスクは、不織布製の使い捨てで、「サージカルマスク(手術用)」と呼ばれています。普段なら簡単に手に入るモノですが、本来は医療現場で下記の用途で使用することを目的としています。
1)「マスクをしている人」の唾液などが、外に飛ばないようにするため
2)自分の咳による飛び散りを防ぐため(咳エチケット)
3)自分を血液・体液等の飛沫から守るため

 花粉症予防でも多く使用されていますが、上記の通り、目的は自身が発する飛沫や、外部からの飛沫を遮断することであり、構造的に密閉度が限定的なため、微粒子の防御や空気感染の予防には適していません。昨今、微粒子やウィルスを99%カット!などと記載しているマスクをネットやコンビニ等でも多く目にしますが、仮にフィルター性能がそうだとしても、顔面との装着にわずかでも隙間があれば微粒子は難なく通過してしまいます。

ただし、サージカルマスクはその目的から、顔面との密着には適した構造になっていないのですが、少し気をつけるだけで、エアロゾル等の微粒子を大幅に防御することも可能です。

よって、マスクは装着方法が非常に重要です。

マスクの着用方法は下記の通りです。;

手指衛生をした後、いきなり装着せずに、鼻部の留め金を鼻の形に合わせて折る。


装着した後、留め金を上から押さえ、隙間のないように調整する。

最も隙間ができやすい部分なので、しっかりと調整する。ここに隙間がないとメガネも曇りにくい。

鼻部を押さえ、プリーツをしっかりとアゴの下まで伸ばす。

最後にイヤーストラップを伸ばして、横からの隙間もないように調整する。
 サージカルマスクの着用に関して、この時期よく一日中つけている方がいますが、マスクは湿ってしまうと効果が下がるため必要な時にのみ着用するようにしてください。また、マスクを一日中着けていると、着けたり外したりと頻繁にマスクに触れることになり、マスクも汚染されている可能性があることから手指が汚染し、感染のリスクも増えることになります。マスクに触れた後は、必ず手指衛生をするようにしてください。

 時々、マスクから鼻を出している人がいますが、言うまでもなく、それでは意味がありません。また、マスクは自分を守るというよりもむしろ、自分が感染していたら利用者さんにうつさないという目的がありますから、特にこのシーズンは利用者さんと接する際は、必ず着用するようにして下さい。

マスクを外すときも注意が必要。マスク表面には触れないようにストラップから外す。


マスクはどう選べばいいの?
 先に述べたように、マスクは薬局やコンビニを始め、入手困難となっていますが、実際の大学病院等の急性期医療現場で感染予防用に使用されている製品、医療用サージカルマスクには、一つの規格があります。米国の規格ですが、ASTM F2100-11という性能要求要件に見合ったモノが医療用マスク採用の最低条件となっているので(パッケージに表示義務)、マスク選択の際の基準としていただけたら間違いないと思います。



■手袋・エプロン
 利用者さんのおむつ交換等、体液や排せつ物に接触する可能性がある場合は、手袋やエプロンをするようにします(状況に応じてマスク、アイウェア)。介護施設や訪問介護の場合、一日に何件もの利用者さんの処置を行うことがありますが、この場合、使い切りが基本です。ディスポーザブルタイプのものを使用して処置ごとに交換してください。この際も、外した後は必ず手指衛生をして下さい。使い捨ての手袋は、使用中も劣化し、目に見えないピンホールが空くことがありますので、外した後も必ず手指衛生(汗もかき、雑菌の繁殖もあるので、できれば流水による手洗い)が必要です

 手袋で特に気をつけて欲しいのが、使用後は直ちに外すことです。手袋は使用後は当然汚染されているので、その手で周囲を触ると感染のリスクが広がります。手袋の目的は着用者を汚染から守ることですが、着けっぱなしにすると自分は守られても周囲をリスクに曝すことになります。
 また、手袋の上から、アルコールで手指消毒をする方をたまに見かけたりしますが、これも厳禁です。樹脂製の手袋はミクロベースでは表面に凹凸があり、汚染除去し難いだけでなく、アルコールで劣化もするので、ピンホールが空きやすくなります。

 個人防護具を脱ぐ場合、その順番が重要

 使用済みの個人防護具は、それ自体が汚染を広げるリスクがあるため、汚染度の高いモノから脱ぐのが基本です。また、首から上は簡単に洗ったり、消毒したりできないので、マスクやゴーグルは手指衛生をした後、最後に外すようにします。

個人防護具の脱ぎ方および順番は下記の通りとなります;



グローブが最も汚染されているので、脱ぐテクニックは必ずマスターして下さい。





首から上の防護具を外す前に必ず手指衛生をして下さい。


下記は一連の動画です。参考にして下さい。



 高齢者施設や介護事業所では、加えて職員の休憩室の環境管理も大切です。部屋の大きさによっては、密閉空間になりやすく、飲食もする場所となっている場合が多いので、テーブル等の環境衛生と共に、換気にも十分注意してください。


 感染症は、100%防ぐことはできませんが、上記のポイントに気をつければ、そのリスクを大幅に下げることができます。
 感染対策には目的が2つあります。1つは患者さん、利用者さん、家族を感染から守るという事、そしてもう1つは医療介護従事者を感染から守る事です。今回の新型コロナウイルスのように感染力の強い感染症の場合、医療介護従事者自身が市中で感染し、施設または家庭に持ち込む可能性もあるので、流行中は、自身を守るためだけでなく、まわりを守る意味でも感染対策は重要です。
また、地域の介護施設、在宅での感染対策は上記に述べたように、1.手指衛生、2.咳エチケット、3.環境衛生、4.個人防護具の適正使用、5.換気、に尽きると言っても過言ではありません。これらの対策は新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザ等の他の感染症に対しても感染対策の基本となるものです。

 介護施設や在宅の利用者さん、そして自身のご家族を守るためにできること、それは上記の実践の徹底あるのみです。

 今回はブログ形式で思うところを書いているうちに長文となり、参考文献等は記載しておりませんが、何か必要なものやご質問がありましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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