日本はマスク等の個人防護具の製造を国内回帰すべきか?

 日本は個人防護具PPEの製造を国内回帰すべきか?
答えはYesであり、Noです。

 昨日、NHKスペシャル「ウイルス襲来 瀬戸際の132日-後編-」で我々のN95調達に関するインタビューが取り上げられましたが、ちょっと違う意図として切り取られた感があるので、補足します。

 当時のN95の輸入に「なす術がない」とのナレーションが入りましたが、なす術がないと思ったことは当時も今も一度もなく、ありとあらゆる手段を講じて、日本の医療施設にN95をお届けする行動をとり続けています。4月当時は政府からのバックアップが中々得られず、資金的に窮地に追い込まれたり、シンガポールでモノを差し押さえられたりと散々な目にも遭いましたが、今もこれからの秋冬に備えて、厚労省とフィットテストも含めてプロジェクトを進めています。現場の方々にはまだまだ十分なN95が行き渡っておらず、心苦しい限りですが、もうしばらくご辛抱ください。誠に申し訳ありません。

 また、私の話が切り取られ、「使えない、そんな残念なことはない」で終わり、あたかも輸入のN95は使えない、その続きの興研さんの国産にすべき的な解釈となっていましたが、使えない、残念と言ったのは厚労省が当時大量に買ってしまったKN95(イヤーループ)のことであり、その部分だけを切り取られ、あたかも輸入のN95が使えないと編集されたのにはびっくりしました。

 N95の国産化はもっと進めるべきですし、興研さんの努力には深い敬意を表しますが、通常期の約20倍に当たる今回の特殊需要に備えて、その体制を原料を含めて全て国産化で賄うということが正しい手法とはどうしても思えません。戦略物資だから今後全て国内でという考えは問題の本質ではないと思っています。問題はいかに有事の際も物資を枯渇させないかであり、製造国の一極集中化の解消や備蓄の見直し、さらにはワクチン政策で取られているように国やWHOがグローバルに事前にPPEに関しても購入量の取り決めをするなど、手法はいくつかを組み合わせて行うべきだと思っています。パンデミックはいうまでもなく、世界の問題であり、私も今回は日本のためだと、なりふり構わず調達に走っていますが、調達力のない国、生産力のない国は置き去りです。このことはいつも私の頭の片隅にあります。

 テレビやメディアで取り上げていただくことにより、私にも直接、PPEは国内回帰すべきとの意見を言ってくださる方がかなり多くいます。有難く、共感もしますが、ただ、米国を筆頭に自国の事しか考えない風潮に危機感も感じています。また、長い目で見たときに医療費の削減は国の喫緊の課題でもあり、平常時に戻った際のコスト削減のためにも、PPEのグローバルサプライチェーンは止めるべきではないと思っています。さらに日本は自然災害が多い国でもあるので、国内だけに工場を集約するのもリスクです。
 あくまでも我々の意見ですので、間違った解釈があればご指摘いただければ幸いです。

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