環境の消毒って、必要なの?

 

私がこの仕事を始めた25年前は、「環境の消毒って、必要なの??」といった議論がちょうど始まった頃でした。当時はまだ、ホルマリンで手術室を燻蒸消毒したり、グルタラールアルデヒドを病室内に噴霧したりするのも普通でしたので(本当です笑)、それは必要ないよね、という議論が始まった頃だったんです。

 この議論の発端は、医療関連感染(院内感染)は「手指」の汚染が主原因であり、環境の消毒は重要でない、してもすぐに汚染されるから無意味、むしろ、ケミカルが人体に有害というエビデンスや意見が多数を占めるようになっていったという経緯があります。

言うまでもなく、感染制御に最も重要なのは、今でも「手指衛生」です。

 極端なことを言えば、手指衛生がもし、完璧に出来るなら、感染制御はそれだけでほぼ完了です。もちろん、大元を断つと言う意味で抗菌薬の適正使用も重要であり、再生する必要のある医療機器・器械の洗浄、消毒、滅菌も重要であることは言うまでもありませんが。

よって、手指衛生が完璧なら、環境衛生は必要ありません、
と言っても過言ではないと思います。
 そもそも手指衛生が完璧なら環境は汚染されにくいし、たとえ環境が汚染されたとしてもWHOの5つの瞬間で手指衛生が完璧なら、患者さんに伝播のリスクは発生しません。

 ただ、手指衛生を完璧にすることは、この25年を経てもできていません。世界中で様々な教育やセミナー、最近ではセンサー等のIoTを利用した監視システムも開発されていますが、未だに決め手となる解決策は出てきていません。手指衛生のコンプライアンスは25年前よりは格段に進歩はしているはずですが、耐性菌の台頭もあり、院内感染は未だに大きな課題です。なので環境からの手指への水平伝播を防ぐために環境表面の衛生があらためて重要になってきているのです。ただし、20年以上前の環境消毒が空間を消毒する要素が大きかったのに対し、今、あらためて世界で大きな流れがきている環境衛生とは、環境空間ではなく、手指が汚染されるリスクのある環境表面の衛生のことです。
 そして、環境衛生もまた、清掃や消毒などを人が行う行為であるが故に、完璧にすることは難しい。また、グローブやマスク等の個人防護具PPEのコンプライアンスも完璧を求めることは同様に非常に困難です。

 どの対策も完璧が難しいから、それぞれを補う仕組みが必要になってきます。感染制御は、だから、一つの対策だけでは成り立たず、一つ、一つの対策を紡いでいく(バンドルする)、我々はそれを「感染管理のチェーンをつなぐ」と呼んでいますが、その対策のチェーンをつなぐことが大切であり、それが感染予防、感染制御だと我々は考えています。

 では、根本的な問題として、
 なぜ、完璧にすることが難しいのでしょうか。

 それは言うまでもなく、「人」だからです。

 これまで手指衛生ができないのは、ひと個人の問題として「教育」が世界中で重視されて来ましたが、教育だけでこの向上を図るには限界があると思っています。人間の行動は科学されてきていますが、いまだに謎が多く、医療に限らず、行動科学は全ての産業で、マーケティング上、必須であり、最もホットな領域となっています。

 今後の感染制御の方向性については、大きく2つあると考えています。一つは、質を均一化、標準化するために、人を介さない自動化を取り入れると言うこと。そしてもう一つは、教育だけにに頼らない「人とモノとの関係性」をもっと深く読み解き、「行為につながるデザイン」をもっと強化する必要があるということです。

 簡単な例で言いますと、例えば、環境衛生の自動化であれば、完全自動化は当分、難しそうですが、標準化できない人の手を介した後の「質の保証」を担保すると言う意味で、スイッチ一つで誰が操作しても同じ消毒レベルまで自動で実行できるシステムや、個人防護具PPEに関してもその着脱等に、簡素化、自動化できる余地はまだ残っていると考えています。

環境衛生の自動化、UV-C照射装置。 昔あった紫外線照射とは異なり、空間ではなく、環境表面に強力なUV-Cを照射。短時間(5〜10分間)で耐性菌を除菌。


 手指衛生剤やPPEのディスペンサーに関しては、思わず目を引くであるとか、触って見たくなるといった感性に訴える要素は「重要な性能」だと考えています。一般的にこれらのディスペンサーは周囲環境に調和する基調でデザインされることが普通と思われていますが、その結果、識別しずらい、目立たない状況が多く発生しているような気がします。
 ちなみに我々のPPEディスペンサーは、病院環境に通常見られないようなパープル色であったり、真っ赤や緑といったあえて調和しないカラーを選んでいます。お客様からは社長の趣味だと思われている節もありますが笑、そんなことはありません(キッパリ)。また、あえて邪魔になる場所に設置し、気づきによって、行為につながる、促す設置場所も重要だと考えています。

 研修直後は手指衛生の遵守率が上がるが、2〜3ヶ月もすると元どおりとは、「感染管理のあるある」とよく言われますが、この人間特性を逆手に取る手法など、まだできることは多そうです。
ご興味のある方はご一報ください。色々な手法をご一緒に試してみませんか。

カラーコード可能。目立つ、どこにでも付けられる、オシャレなPPEディスペンサー

病院内で見かけない「パープル色」のPPEディスペンサー

環境清拭ワイプも「緑」と「赤」のディスペンサー。遠くからも識別できる。






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