新型インフルエンザに思うこと

久しぶりのブログ更新です。相変わらずの更新の無さに内外からお叱りを受けています。スミマセン。

 さて、新型インフルエンザです。
世の中は、新型インフルエンザA H1N1が弱毒性であったことを受け、急速に「いつも通り」に戻っています。
 空港検疫での水際封じ込め対策や学級閉鎖も含めて騒ぎ過ぎだとの批判も出ています。結局、通常の季節性インフルエンザと変わらないとの風潮が見受けられるのがちょっと不安です。

 検疫に関しても無意味だったとの意見がありますが、発生当時は、病原性や毒性の強さ等も今ほどわかっておらず、正体不明のウィルスに対しては、最大限の防御態勢を敷くことはむしろ当然だと思います。実際には時間稼ぎ程度の効果しかなかったかもしれませんが、この時間稼ぎが無意味であったとは思いません。もちろん、厚労省も検疫で100%スクリーニングできるとは思っておらず、そのために、その後の国内感染拡大に向けて各段階ごとの防止策が準備されています。

 100%防ぐことは不可能でも決して諦めず、可能な限りの対策を一つ一つ積み重ね、つないでていくことは、我々が日々、医療施設で医療従事者の方々と戦っている医療関連感染対策(院内感染対策)そのものです(我々はこれを「感染管理のチェーンをつなぐ」と言っています)。

 当初は正体がわからないので、強毒性のH5N1型を想定し、最高レベルで新型インフルエンザに対峙、その後、実態がわかるにつれて柔軟に体制を変化、弱毒性に合わせて対策を緩和させていくことが今回のシナリオの正解。
 今回は、この「柔軟に体制を変化させていくこと」が十分に事前に議論されておらず、タイミングや規制に対して国と地方自治体とに温度差があり、混乱となりました。ただし、この事態は日本政府だけでなく、WHOも病原性や毒性は考慮に入れず、感染の拡散度合いにより警戒水準を決定していたため、警戒レベルだけが上がって、実態にそぐわない過剰な対策が発動され、少々混乱を招いたというのが真相だと思います。26日にはWHOのフクダ事務局長補代理も警戒レベルの基準見直しを表明されています。

それにしても今回のインフルエンザウィルスは戦略を持って人類に挑んできているような気がしてなりません(エビデンスをベースにビジネスするモノとして不適切な発言ですが)。
鳥H5N1ばかりを気にしていたら、意表をついて豚H1N1として登場、大警戒をしたところ、弱毒で拍子抜け(?)、気が緩んだところで(ここからはフィクション)、第2波として秋、冬に強毒に変異したウィルスが猛威をふるい、季節性のインフルエンザもまん延して抗ウィルス薬が足りず、ワクチンの方も間に合いそうになってきたところで、満を持してH5N1による超新型インフルエンザが登場、抗ウィルス薬にも耐性...。これが最悪のシナリオですが、考えられないことではありません。私自身、楽観的な人間であり、現在はスペインかぜの時と較べ、多くの武器と情報を持っているので、当時のような被害がでるとは考えにくいですが、「いつも通り」に向かっている世の中を見ていると不安を禁じ得ません。

今回のH1N1の発生は、むしろ予行練習および準備期間の機会を与えられたと認識し、我々モレーンもウィルスの戦略(?)に真っ向から立ち向かう所存です。弱毒だからと対策の手綱を緩めず、医療材料の備蓄や患者急増時の環境整備に向けて対策を打ち出しています。
少し長くなりました。次回はモレーンの新型インフルエンザ対策に関する具体的な考えを少しお話したいと思います。

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